還暦も過ぎて、最近は自分の体力に自信がなくなってきたけれど、このレッドウイングのブーツだけは別格です。
長年連れ添ってきたこの相棒。傷もついたし、色もだいぶ深みを増して……いわゆる「貫禄」というやつでしょうか。新しい靴を買うのも悪くないんですけどね。自分の足の形に馴染みきったこの靴を履くと、なんだか安心するんです。これまでの自分の歴史が刻まれているような気がして。

ただ、ずっと気になっていたのが、あの特徴的な「白いソール」の汚れです。新品の時の眩い白さはどこへやら。履けば履くほど黒ずんで、くすんでいくんですよね。正直、「これも味だよね」と自分に言い聞かせてきたんですが、やっぱり還暦オジサンとしては、足元くらいは少し小綺麗にしておきたいな、と。
年齢とともに意識するのは清潔感。これがなくなるとマズイといつも考えてます。
ネットを眺めると、スニーカークリーナーだとか、高級な革靴用洗剤だとか、洒落た名前のケミカルが溢れています。「これを使えば間違いなし!」なんて広告を見ると、ついつい買っちゃおうかな……なんて弱気な心も芽生えるんですが、グッと堪えました。
だって、還暦を迎えた私には、そんな洒落たものよりも、もっとしっくりくる「王道」があるんです。
そう、あの緑色のやつ。「ウタマロ石鹸」です。
なぜ今さら、ウタマロなの?
若い頃は、新しいものや評判の良いものにすぐ飛びついていたけれど、人生の後半戦に入ると、なんだか「シンプルで、確実で、どこでも手に入る」という信頼感にホッとするんです。
ウタマロ石鹸。子供の頃、上履きをゴシゴシ洗った記憶がある人も多いんじゃないでしょうか。ドラッグストアの隅っこで、派手なパッケージもせず、ただひたすらに「汚れを落とす」という使命を全うしている……あの健気な姿。これこそが、私のレッドウイングを蘇らせてくれる最高の相棒なんです。
ウタマロは、泥汚れと戦う親の味方
そういえば、先日知り合いと話をしていて、ハッとしました。 「ウタマロって、泥汚れにめちゃくちゃ強いよね」と。
その知り合いによると、お子さんが幼稚園で体操服を泥まみれにして帰ってきたときに、ネットで調べて使い始めたのがきっかけだったそうです。普通の洗剤ではなかなか落ちない泥汚れも、ウタマロならスッキリ。幼稚園で泥水にハマって、靴を借りて帰ってきた……なんていう、てんやわんやな思い出も、ウタマロが一緒に乗り越えてくれたのだとか。「懐かしい」と笑うその人とのやり取りで、なんだか少し胸が熱くなりました。
世代を超えて、泥んこ遊びに駆け回る子どもたちを支えてきたこの石鹸が、今度は巡り巡って、還暦オジサンの古靴磨きを支えている。そう思うと、あの緑色がなんだか一段と頼もしく、愛おしく見えてくるから不思議なものです。
準備はこれだけ。オジサンの身の丈に合った道具
高い道具はいりません。家にあるもので十分です。
- ウタマロ石鹸
- 使い古した歯ブラシ(これが一番の武器!)
- バケツと水
- 雑巾(拭き取り用)
以上。これだけです。専用のブラシなんて買わなくて大丈夫。使い古した歯ブラシって、不思議とソールの溝に吸い付くようにフィットするんですよね。長年使った分だけ、私の癖も分かってくれている……ような気がします。
いざ、実践。無心になってゴシゴシする時間
手順もシンプルです。難しい作法なんて何もないので、気楽にいきましょう。
まずはソールを水で軽く濡らします。そして、ウタマロ石鹸を歯ブラシに直接こすりつけて、泡立てる。あとは、汚れが気になる部分を、無心になってゴシゴシ磨くだけです。

最初は真っ黒だった泡が、だんだんと灰色に変わっていく。この瞬間がたまらないんです。日々の生活で溜まった埃や泥が、石鹸の力で浮き上がってくる。なんだか自分の中のモヤモヤまで一緒に落ちていくような気がして、心が洗われる感覚になります。

特に汚れがひどい部分は、根気よく。力を入れすぎず、歯ブラシの毛先を使って、円を描くように磨くのがコツです。還暦の指先でも疲れすぎない程度に、しかし確実に汚れを追い出していきます。この作業、意外と没頭しちゃうんですよね。
唯一にして最大の「注意点」
ここで一つだけ、絶対に忘れてはいけないことがあるんです。これさえ守れば失敗はないので、メモっておいてくださいね。
「ウタマロ石鹸をしっかり洗い流すこと」
これだけです。本当にこれだけ。
石鹸分がソールの中に残ってしまうと、後から黄ばみの原因になるんです。せっかく白くしたのに、乾燥したらまた黄色くくすんでしまっては……私の心も一緒に黄ばんでしまいます。泡が完全に見えなくなるまで、バケツの水で、できればシャワーを当てて、溝の奥まで流しきりましょう。

洗い流したら、雑巾で水分を丁寧に拭き取ります。あとは風通しの良い日陰で、のんびりと乾燥させるだけ。直射日光に当てて急いで乾かそうとすると革にダメージがいっちゃうので、そこは「のんびりと待つ」。これが、オジサンの嗜みというやつです。
道具と付き合う、ということ
乾燥が終わり、本来の白さを取り戻したソールを見ると、なんとも言えない達成感があります。新品のような「無機質な白」じゃない。長く大切にメンテナンスされた道具だけが持つ、ちょっと誇らしい「清潔感のある白」です。

還暦を過ぎて、正直、体のあちこちが痛かったり、衰えを感じることも増えました。人に言えないような悩みも出てきます。でも、こうして自分の手で道具をケアして、蘇らせることができる限り、まだまだ人生は面白いなって思うんです。
レッドウイングを履いて出かけるとき、足元が綺麗だと、不思議と背筋が伸びる気がします。古い友人と会うときも、孫と公園に行くときも、この手入れされたブーツがちょっとだけ自信をくれる。
特別なことは何もいらない。 使い慣れた道具と、少しの手間と、ウタマロ石鹸さえあれば、お気に入りは何度でも蘇る。
さて、次はどの靴を磨こうか。 ブーツの紐を締め直しながら、また次なる相棒を探すのも、オジサンの楽しみのひとつです。
