「レッドウィング(Red Wing)」という響きに、胸が熱くなる同世代は多いはずです。 木村拓哉さんがドラマでアイリッシュセッターを履き、一大ブームを巻き起こしたあの頃。私もその熱狂に当てられた一人で、以来、かれこれ30年近くこのブーツと共に歩んできました。
最近、ネットで「レッドウィング 時代遅れ」なんていう検索ワードを見かけることがありますが、30年履き続けている私から言わせれば、それは大きな間違いです。
むしろ、還暦を過ぎ、人生の酸いも甘いも噛み分けた今こそ、このブーツは真の輝きを放つと確信しています。
30年選手の相棒「875」と歩む人生
私の足元を支え続けているのは、不動の定番、品番「875」。 画像を見ていただければわかる通り、タンの裏には通称「半円犬タグ」が鎮座しています。このグリーンのタグこそ、90年代のあの熱狂を知る世代にとっての証であり、今となってはかなり希少なディテールです。

30年も履けば、当然ガタもきます。少し前、ソールがすり減ったため交換に出しました。 近所の靴修理屋さんに持ち込む選択肢もありましたが、私はあえて公式の修理ルート(ABCマート経由)を選びました。理由はただひとつ、「ソールにRED WINGの文字が欲しかった」から。

完全に自己満足の世界かもしれません。しかし、歩くたびにチラリと見えるそのロゴが、所有欲を完璧に満たしてくれるのです。この「こだわり」こそが、大人がモノを長く愛でる楽しみではないでしょうか。
スエードの「8167」と、カスタムで遊ぶ「8138」
私の下駄箱には、他にも個性豊かな相棒たちが控えています。

まずはスエード(ラフアウトレザー)のラウンドトゥ「8167」。 モックトゥの875に比べると、どこか丸みを帯びた優しい表情を持つこのモデル。ベージュの柔らかな質感は、履き込むほどに毛羽立ち、独特の汚れや擦れさえも、まるで風景画のように「味」として吸収してくれます。スエードゆえに、雨の日などは多少神経質になりますし、出かける前に防水スプレーを念入りにかける手間もかかります。しかし、その「気を使う時間」や、帰宅後にブラッシングをするひとときさえも愛着に変わるから不思議なものです。

そして最近、遊び心でカスタムを楽しんでいるのが、深みのあるダークブラウンが魅力の「8138」です。 このブーツには、純正のジッパーユニットを装着しています。巷では汎用的なYKKのユニットを見かけることもありますが、私がこだわったのはジッパーヘッドに「RED WING」の刻印が入っていること。これがあるだけで、カスタム品でありながらブランドの正統な血統を感じさせてくれる、譲れないポイントなのです。

このジッパーユニット、実は実用面でも恐ろしいほどの威力を発揮します。座敷のある居酒屋や、急な訪問先でブーツの脱ぎ履きに四苦八苦するのは、膝や腰にガタが来始めたオジサンの宿命。しかし、このユニットがあれば、紐を解く煩わしさから解放され、驚くほどスムーズに、かつスマートに動作を完了できます。伝統的なワークブーツの武骨さを重んじつつ、現代の日本のライフスタイルに合わせた合理的な利便性を取り入れる。そんな「柔軟な大人の遊び」を楽しめるのも、長年このブランドと付き合ってきたからこその醍醐味です。

店員さんがこっそり教える「禁断のモデリング術」
先日、これらの相棒を連れてなじみのセレクトショップに出かけた時のことです。 若くておしゃれな店員さんに「そのブーツ、めちゃくちゃカッコいいですね!いい味が出てます」と声をかけられ、調子に乗って新しい一足を買い足してしまいました。
その際、彼から教わった「大人がレッドウィングを今っぽく履きこなすコツ」が目から鱗でした。
「アメカジ全開」にしない引き算の美学
昔のように、太いデニムにネルシャツ……という全身アメカジスタイルは、私たちがやると「当時から時が止まった人」に見えがち。ボトムスにスラックスや細身のチノパンを合わせる「引き算」が大切だそうです。
ロールアップの塩梅
裾をダボつかせず、くるぶしが見えるか見えないかくらいで綺麗にロールアップ。これだけで30年前のスタイルが現代的にアップデートされます。
「女性誌」をモデリングする!?
一番驚いたのが、彼が内緒で教えてくれたこの秘策。 「もし女性ウケを狙うなら、あえて女性用のファッション誌を見て、その中に写っている男性のファッションをモデリングするのもアリですよ」
還暦過ぎの私に女性ウケ!?と戸惑いましたが、女性が好む「清潔感」や「理想のバランス」を取り入れるのは、大人として大切な客観的視点だと気づかされました。
若い世代にこそ、この「時間の魔法」を味わってほしい
レッドウィングは、決して私たち「元・アメカジ少年」たちだけの特権ではありません。むしろ、今の若い世代の方々にこそ、どんどん履いてほしいと思っています。
今は何でもクリック一つで手に入り、トレンドも目まぐるしく変わる時代です。そんな今だからこそ、「10年、20年、30年と付き合える道具」を持つ喜びを知ってほしいのです。
最初は硬くて靴擦れするかもしれません。重たくて嫌になるかもしれません。 でも、それを乗り越えて自分の足に馴染んだとき、その一足は世界にたった一つの「自分の分身」になります。私が今、30年前のブーツを誇らしく履いているように、皆さんが30年後、白髪混じりになったときに「これは20代の頃に買ったんだよ」と笑って語れる相棒を育ててほしいのです。

時代遅れではなく、それは「スタイル」
レッドウィングは流行り廃りで語るものではありません。履き込むほどに自分の生き方が刻まれていく、ファッションを超えた存在です。
もし「時代遅れかな?」と躊躇している同世代の方がいたら、自信を持って履き続けてください。そして、もしレッドウィングに興味を持っている若い方がいたら、ぜひその扉を叩いてみてください。
30年経って、少し丸くなった自分の背中と、深く刻まれた革のシワ。 それらが重なり合ったとき、最高にクールなスタイルが完成します。
新しい一足を買い足した今、それらを履き潰すにはまだまだ時間がかかりそうです。人生100年時代、女性誌をチラ見(笑)しながら、その若い世代の新鮮なスタイルに刺激を受けながら、このブーツと一緒に、もっと遠くまで歩いてみようと思います。
